孤高の天使



次に気づいたときは、人間界も檻に入ったルーカスもいなかった。



ここは…どこ……?


光の粒子が舞う天界でもなく。

蒼い月が光る闇の世界…魔界でもなく。

はたまた先ほどまでいた人間界でもない。




周りに在るのはただただ灰色。

そこには家があるわけでも森があるわけでもなく、灰色に染められた更地があるのみ。


もしかしてここは冥界……?

そう思ったが、ふと上げた視界の先には長い黒髪を背に流したアザエルの姿。

その前には大きな鏡のようなものがあり、アザエルは口元に笑みを湛えながら鏡を見つめていた。




「アザエル様……」

「おや、目を覚ましましたか」


掠れた声で呼びかければ、鏡を見ていたアザエルがこちらを振り返る。





「ここは……」


そう言って口を開きかけた時、カチャっと金属音が響く。

見れば、私の手には頑丈そうな手枷がかけられていた。




「あぁ…すみません。今の貴方では抵抗できないと分かっていますけど、念のため手枷をつけさせていただきました」


何の悪びれもなく笑顔でそう言ったアザエルは当然のごとくそう言った。



「そんなことよりもこちらへ来なさい。面白いものが見れますよ」


両手を繋ぐ枷を支えに立ち上がり、唯一自由な脚でアザエルに近づく。



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