孤高の天使


『わたしのこと…分かる?』


震える声がラファエルに向けられる。

ラファエルが反応するまでの時間がやけに長く感じた。




そして――――

ラファエルは何も言わずに首を横に振った。

イヴはキュッと口を結んだ後、涙を流しながらラファエルに向かって微笑んだ。





『そう、良かった』


胸が押しつぶされそうなくらい辛いはずなのに。

本当は自分の事を思い出してほしいと叫びたいはずなのに。

イヴは自分を忘れてしまった愛する人に向けて笑顔を向ける。

ラファエルが哀しみを抱いたまま過ごさないように。

これからを生きてもらいたいからこそ、イヴはラファエルの前で悲しんではならなかった。

イヴは笑顔を張り付けたままラファエルに手を伸ばす。





『ラファエル様、目を閉じて…眠って』


イヴの手がラファエルの両瞼を覆い、そう言う。

ラファエルはイヴに言われるがままに目を閉じた。

透けた自分の手を通してラファエルが目を閉じたのを確認すると、イヴの瞳から一気に涙が零れ落ちる。

息を詰まらせて、嗚咽を上げそうになるのを必死にこらえるイヴ。



手だけじゃない、腕や脚、胴体全てで透過が進んでいた。

イヴの体はもう限界だった。

そして、最期の時を感じたイヴは静かに口を開く。






『今度目覚めた時も貴方が幸せでありますように。ずっとずっと愛しています』


パァァ…と眩い光を発してイヴは消えた。

胸に刺さっていた魔剣と左手の薬指にはめられていた指輪を残して…




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