孤高の天使
「お前はもう飛ぶ力もないようだな」
「私はラファエル様の傍を離れたくないだけです」
見下ろして笑うミカエルを見据えて毅然として答える。
地面にぺたりと着けた両足が闇の粒子の影響で動かないのは確かだ。
けれど私はミカエルに告げた通りここを動くつもりはなかった。
「強がりを言うな。どうせ力も戻っていないのだろう」
「どうでしょう」
答えを濁した私にミカエルは眉を顰める。
これは一か八かの賭けだった。
察するにミカエルはラファエルにとどめを刺そうか迷っている様子。
圧倒的に有利な立場であるミカエルが迷っているのは、私というイレギュラーな存在が現れたからだろう。
ミカエルは自らが施した封印が解かれ、私に力が戻っているのではないかと思っている。
そんな状況で自分の身可愛さで他の者にラファエルを襲わせたミカエルが自らとどめを刺そうとするだろうか。
そう思ったからこそ強気に出てミカエルを挑発したのだ。
「ミカエル様こそやせ我慢をなさらずお逃げになった方がよろしいのでは?」
ミカエルは形の整った眉をピクリと動かし、一瞬緊迫した空気が流れるが、フッと口の端を持ち上げる。
「あぁ、そうさせてもらおう。私はお前たちと違って次の神になるべき身だからな。お前たちはせいぜい最期の時を楽しめ」
ミカエルはそう言い残して飛び去って行った。