孤高の天使


ミカエルの姿が遠ざかり、見えなくなった途端強張った体から力が抜ける。

人生初の挑発が成功したことで緊張が解け、深く息を吐き出した。


しかし、安堵している場合ではない。

ラファエルの放つ闇の粒子は時間が経つにつれ確実に広がっている。

闇の粒子に触れて肌は傷つき、ヒリッと焼けるような痛みが襲う。

封じられた聖力が戻ったからか差ほどダメージを受けていないがこのままの状態が続けば私も闇に飲まれる。



長くは…もたない…

ラファエルの頭を抱く様に腕を回し首もとに顔を埋める。

体が冷たい……

ラファエルの体は驚くほど冷え切っており、ぴくりとも動かない。



まるで死んでいるような――――


ラファエルをこうさせているのは闇の粒子だろう。

この闇の粒子を止めなければ…





「ラファエル様…っ…」


そっと耳元で名を呼ぶ。

名前を呼んだ瞬間、闇の粒子の抵抗が増した気がした。

私の声も幻聴だと思っているのだろうか。

目の前で光の粒子となって消えた私がこの場にいるはずないと。

否、幻聴だと思おうとしているのかもしれない。


もうこれ以上希望と絶望を抱かないために。

これはラファエルの拒絶なのだ。




「ラファエル様」


名前を呼ぶ度に肌の表面をナイフのように切りさく闇の粒子。

ラファエルに触れる箇所は炎症を起こしたように痣ができてゆく。




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