孤高の天使
意識を手放してはだめ…ラファエル様を一人にはさせない。
強い想いはあるのに…
その想いを叶えるだけの力が足りない。
数百年前ラファエル様が感じた無力はこんな風だったのだろうか。
愛する人の苦しむ姿を前に何もできない無力感とこの広い世界に独りになってしまう孤独感が襲う。
意識が遠のく……――――
『イ…ヴ……』
耳元でかすかに聞こえた声にドクンと心臓が鳴った。
私に都合のいい聞き間違えではないだろうか。
頭を上げる力もないため、ラファエルに寄りかかったままそんなことを思う。
「ラファエル…様…?」
意識が戻ったのなら声に反応してくれるはず。
未だ思い通りにならない体を歯がゆく思いながら掠れた声で呼びかける。
しかし、ラファエルからの返答はなかった。
やっぱり私の空耳だったんだ…
幻聴まで聞こえるなんていよいよこの体も限界なのかも。
手足が痺れるのはもちろんのこと、体の所どころについた傷の痛みも感じなくなってきている。
ごめんなさいラファエル様…
瞼を閉じて薄れゆく意識を完全に手放す手前。
ラファエルにもたれ掛かっていた体が横に倒れそうになった時だった。