孤高の天使
トン…―――――
何かが私の体を受け止めた。
地面に叩きつけられることのなかった私の体はそのまま引き上げられるように浮き、体ごと何か温かいものに包まれる。
うっすら目を開きぼやけた視界で辺りを見れば、周囲にたちこめた闇の粒子がだんだんと薄くなっている。
そしてそのまま空にやった視線を下げるが、見えるのは緑の消えた居住区だけ。
けれど私の体を包んでいるものは紛れもなく愛する人の腕だと確信できた。
「ラファ…ル……ま……」
やっと出た声は消え入りそうなほど小さく、掠れて裏がえった。
しかしその声は確かに届いていたようで、私を抱きしめる腕が強くなった。
痛いくらいに抱きしめられる力は少し苦しかったけど、涙が溢れるくらい嬉しかった。
そしてラファエルは私の体をそっと離す。
目線を合わせる様に屈んだラファエルと視線が交差する。
ラファエルは目の前の私を信じていいか分からず困惑にも似た戸惑いを見せた。
ゆっくりと伸びてきた長い指が私の方に近づき、寸前で躊躇った後、壊れ物に触れる様に触れられた。
あぁ…本当にラファエル様なんだ……
指先から伝わる温かさに戻ってきてくれたのだと実感できた。
頬にあてられた手のぬくもりに擦り寄るも、口をキュッと結び、涙が溢れないよう耐える。
だって涙で視界がぼやけてしまったら顔がよく見えないから。
けれど――――
「本当に…イヴなのか?」
私と同じくらい掠れてか細いラファエルの声に我慢していた涙が堰を切ったように溢れた。