孤高の天使
「だがそれは俺のエゴだ。俺は君の記憶がないことをいいことにずっとその過去を隠してきた。記憶のない君が不安に思っていることを知っていてずっと…」
グシャッと片手で前髪を掴み、頭を抱える様にして顔を隠すラファエル。
深く息を吸い、溜めこんだ色んな想いを浅く吐き出す。
震える呼吸がラファエルの緊張を表しているかのようで、胸が締め付けられた。
ラファエルは頭を抱えていた手をおろし、躊躇いがちに視線を合わせる。
そして目を細めてこう聞いた。
「こんな俺を軽蔑するか?」
あぁ…そうか……
ラファエル様が不安に思っていることが分かった。
記憶が戻ったことに狼狽えた様子を見せたのはこのことだったのね。
なんて不器用で温かい人なのだろう。
ラファエルの言葉の裏に隠された不安を感じとり、私は改めて“愛おしい”という感情を抱いた。
心の奥底にぽうっと灯りが灯ったように温かく、その温かさにつられる様に顔をほころばせて微笑んだ。
ラファエルはそんな私を見て目を見張り、驚いたような困惑したような顔をする。
きっと私が何で微笑んだのか分かっていないのだろう。
そんな姿をおかしく思いながら、触れそうで触れられないもどかしい距離を詰めて目の前の大きな体を抱きしめた。
「軽蔑なんてするわけないでしょう?」
突然抱きしめられたラファエルはビクリと肩を揺らして体を強張らせた。
私はラファエルの首に腕を回し、耳元で幼子をあやすように優しくそう言った。