孤高の天使



「良かった。ではこれからもここに居てくださいね。」

「そう…ね……」


リリスの無邪気な笑顔に、ぎこちなく答えた。

それでも、私の複雑な心境など知る由もない双子は喜んだ。

そして、嬉しそうに立ち上がり“着せ替え”が再開された。



どうしよう………



私の髪をあたるイリスと、クローゼットのドレスを私にあてて楽しそうにするリリスとは対照的に、心は沈む。



とても天界が恋しい。

悪魔と天使ながらも親しかったルーカスに遠ざけられているからか、自分が“イヴ”でないからか…

現実を自覚するたびに天界への思慕の情が強くなる。



私の居場所はここではなく天界なの。

浮上しかけた気持ちも、瞬く間に急降下した。








その夜――――――


「はぁ……」


ベッドに座りながら深い溜息をついた私を見て、同じく溜息をつくラファエル。



「君には負けたよ、イヴ。」

「え?」


ラファエルが溜息とともに口にした言葉に顔を上げる。

すると、ソファーで書物を読んでいたはずのラファエルが目の前にいた。



「ッ……!」

整った顔が近くにあり、喉まで来た声を抑えて驚いた。




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