有明先生と瑞穂さん
5限目の授業が終わり職員室に戻った有明はすぐに小浜に詰め寄っていた。


「瑞穂さんが授業に遅れてきました。
今までこのようなことはなかったのですが・・・彼女に何かされましたか」


後から考えれば瑞穂の心配をしていたせいで、結構な剣幕だったと思う。


「何もするわけないじゃないですか。
・・・でも偶然図書室ではお会いしましたけど。
そう言ってませんでしたか?」

「・・・・・・言ってましたね。疑ってしまいすみません」

「いいえ、疑われるようなことを言いましたもの」


寂しそうに笑う小浜を見て罪悪感が沸く。




「あら・・・でも瑞穂さん、授業に遅れたんですか?」

「はい、20分ほど」

「おかしいわね・・・」

「え?」




「だって、昼休みが終わる前には口之津先生と図書室を出られたのに」



――――――・・・・・・


―――・・・



それでも今、目の前の瑞穂は
『小浜には会っていない』と言う。

それ以上言及することはできないが、何かあったことは間違いなかった。


(小浜先生に何か言われた・・・?
でもその後、口之津先生と二人でどこに――?)

小浜と何かあったなら、話しておいた方が二人のためなのに話さない。

それは口之津と会っていたことと何か関係があるのだろうか――。


(どうして・・・口之津先生に――――?)


瑞穂の考えが理解できない有明の心に小さな嫉妬心が渦巻く。






目の前で楽しそうに加津佐とゲームをする瑞穂に、有明からは暗い影を見つけることができなかった。
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