有明先生と瑞穂さん
その女子生徒は震えながら自ら話し出した。


「有明先生と・・・瑞穂さんが付き合っているという噂を聞いて・・・それでいてもたってもいられなくなりました・・・。

だんだん、噂を聞いていると、瑞穂さんが・・・憎く思えてきて・・・

私はいつもこんな思いばかりしているのに・・・どうして・・・

この子は運がよくて・・・簡単に欲しいものを手に入れられるんだろうって・・・」


話しながら心乱れていく女子生徒の肩を保健医が抱いて落ち着けようとする。


校長はひとつ重いため息を吐いた。

「噂の話は私も耳にしていました。
年頃の生徒達にこういう噂が流れることは珍しいことではないから、私もあまり気にしてはいませんでしたが・・・今回の件でハッキリさせておかなければいけません。
噂について詳細を知っている人はいませんか?」

校長が聞けば、ちらほらと教師達が話しはじめる。


「有明先生と瑞穂さんが付き合っているという話ですよね」

「有明先生もお若いし、女子生徒に人気がありますからねえ・・・そういう噂はわたくしもよくあるものだと思いますけど」

「でもそのよくある噂で今回はここまで大きなことになってしまったわけで」

「何やら証拠がある、とか聞きましたよ」外にいる生徒達もざわつく。

その時、校長が放った一言で一同は静まり返った。


「有明先生、ご確認します。
その噂は事実ですか?」


その場にいる全ての人の目が有明に向く。





「いいえ。事実無根です」






有明は表情ひとつ変えずにキッパリと答える。

どうしてか、瑞穂の心がチクリと痛んだ。
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