有明先生と瑞穂さん
時間になり会議室に向かうと三人も心配して着いて来る。
他の教師が帰れと叱っても聞かないので、結局教師の方が根負けして静かにしていることという条件で会議室に入ることができた。

会議室には校長、教頭含めた教師数人と女子生徒がすでに待っていた。


――その中に小浜もいた。


有明達も同じ場所に並び、有馬達は会議室の隅に立たされる。


放課後だというのに外には中の様子を伺おうと生徒達が数十人賑わっている。

教師が数人声を上げて追い払おうとしたが、キリがないので校長が「もういい」と静止した。


「瑞穂さん・・・有明先生・・・」


教師の中には図書部顧問の愛野先生もいて、二人を心配そうに見つめている。

付き合っているという事実は知らないものの、二人を暖かい目で見てくれていた愛野先生に心配を掛けるのは申し訳なかった。



女子生徒も、瑞穂と同じようにたくさん泣いたのだろう・・・目を腫らして抜け殻のように呆然としていた。



瑞穂はその女子生徒をぼぅっと見つめる。


彼女もまた噂に巻き込まれた同じ被害者のような気がして、責める気持ちにはどうしてもなれなかった。



「今回の件は立派な傷害事件だ。
できることなら警察沙汰なんて、大事にはしたくない。
だからここで全てを正直に話して欲しい」

そう教頭が切り出すと、一番に口を開いたのは意外にもその女子生徒だった。


「私が有明先生に怪我を負わせました・・・。
私は彼女を・・・瑞穂さんを狙ってましたが、それを有明先生が守ったから・・・それで・・・」


人前で話すなんて目立ったことをするのは苦手なのだろう、彼女はぼそぼそと聞き取りづらいほど小さな声で話す。
緊張しているのかその声は震えて上ずったりしていた。

「花瓶を落としたのも・・・私です・・・」

発言からも彼女が自暴自棄になっていることがわかる。

瑞穂はなぜかそんな彼女に心が痛んだ。


「どうして彼女を狙ったんですか?喧嘩でもしたのですか?」

「いいえ・・・瑞穂さんと話したことはありません・・・」


この発言でこの場にいる誰もがきっかけは噂だと確信したが、誰一人として口にするものはいない。
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