剣舞
約束の時間に、ディック=モンローは、ヴォルハムンの民が待機する宿に、ヴァイスの書状を携え現れた。

水宮楽師のキャラバンを代表する者が受取、全員がその内容を確認する。

「オリビア嬢、早朝より申し訳ございませんが、少々、お時間を宜しいでしょうか?」

ディックの申しでに、オリビアが怪訝な表情をした。

「覇王からの命で、貴方に、長剣の受け方を伝授するように・・・とのことでしてね。」

そういって、その扱いを教え始める。

数度しか会っていない男だが、あまり感情を出さぬはずの男にみえるのに、何か不機嫌そうで、思わず、宮殿に戻る彼に、オリビアは声をかけてしまう。

「何か、ご機嫌を損ねるような振る舞いをしましたか?心なくも・・」
そうなら、お詫びを申さねばといいかけた、彼女に、ディックが笑みかける。

「とんでもない。主に早朝たたきおこされたのが、気に入らないだけなんですよ。朝は、やはり、穏やかな女性の声で起きたい性質でしてね。」

では、後ほどと、短い言葉で会話をくくり、彼は、馬を走らせていった。

本当は、一睡もしていない。

 
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