手紙





「そんで、沖田総司のこと考えてたでしょ」





「考えてないよっ最近海行ってないなーって思っただけ」





「ふーん。ま、とにかく早く忘れなって」





言いながら立ち去る妃菜に、もう聞こえないと分かりつつも小さな声で返事した。





「分かってるよー」





無駄だってわかってる。





こそこそと手紙を書いて、流しはしないものの、海を眺めて沖田を想う。





でも、睦月にとって、他の男と会ったり、メールしたりするほうが無駄だと思うのだ。





沖田を忘れるために、無理やり他の男を好きになろうとするなんて、始めから無茶な話。





結局は沖田が好き。





会ったことはないけど、直接話したこともないけど、好きなのは確実なんだ。





「好き・・・・・」





海に向かう睦月の声は、教室の騒がしい音にかき消されていった。








< 263 / 432 >

この作品をシェア

pagetop