ドロップ-記憶-





教室を出て、ドアを閉めた。


「……なに?」


「俺たちの診断結果、なんだって?」


ハルが聞いた。


「……全身打撲だって」


シューサイは目線をそらした。


「それ以外に、なかったの?」


今度は私が聞いた。


「………」


シューサイは、なにも答えなかった。


「なぁ春西。教えてくれ。俺たちは、なんで何も覚えてなかったんだ?」


ハルがシューサイの肩を掴んだ。


「…………記憶を溜めとくとこが、少しなくなってたって。だから、大切な人を忘れてしまったかもしれない、って…」


そこまで言うと、シューサイは顔をあげた。


シューサイの目には涙が溜まっていた。






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