ドロップ-記憶-





「最初に、春斗の病室に行ったんだ。そしたら春斗に、誰?って言われた。忘れられてて…すげー悲しかった。でも、俺なんかが大切な人なんだ、って…すげー嬉しかった。


それは千歳も同じだ。だから、悲しかったし嬉しかった。なんか複雑だった。


ある日な、俺がロビーにいるとき、二人は隣同士座ってたんだ。でも、二人とも何も喋ってなかった。それどころか、二人とも全然知らない人ってカンジで…

だから俺は思ったんだ。あぁ…ホントに大切な人を忘れちまったんだ、って。俺は、思い出してほしくて、来るたび飴を置いてった。


三人が好きだった飴を舐めれば、なにか思い出せると思って…っ」


そこまで言うと、シューサイは静かに涙を流した。




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