しゃぼん玉。
錆びた鉄の軋む音がする。
この音を聞くのは何回目だろう。

私は101日目から日にちを数えるのをやめた。
初めてここに連れてこられた時、絶対逃げるんだと決めていた。
だけど101日目のあの日、私は諦めた。
こんな痣や打たれた痕が残った体じゃ、きっと母様悲しむ。
だったら、帰れない方がいい。

一瞬でもそう考えてしまうと、帰りたいという気持ちなんてあっという間に消えていった。

「私は……、何のために……。」

ただ呟いただけなのに、ご主人は私を殴った。
私は自然な感じを装いながら、尾ひれを扉の方へ伸ばし、魚が逃げれる道を作る。

「……ご主人。
私を………、殺してください。」

こう言えば、ご主人が私を殴ることは分かりきっていた。
魚を逃がすため。
その言葉に偽りはない。
だけど殺してほしいのも本望。

案の定、ご主人は私を殴り続けた。
私を殺すためじゃない。
ご主人はいつも私を生かそうとする。
私にいつも生きてるということを感じさせようとしている。

「お前は生きないと意味がないんだっ…。
だからっ…、生き続けてろ」

死んだら価値がなくなるから私を生かそうとしているのか、それとも私にただ生きてほしいだけなのか。
後者は有り得ないと思うけど、前者だけでは虚しいから。
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