しゃぼん玉。

それはあの〝トキ〟。

「ミル、この人はどうだ?
将来有望、人からの信頼も厚い。
性格も良い、運動神経抜群。
どこをとってもいいっ!
どうだ?」

父様は毎日飽きずにお見合い写真を持ってくる。

だけど私はまったく興味がない。
だからとびっきりの笑顔で言う。

「私ムリ。
そんな完璧なんて面白くない。
それに自分の相手くらい自分で決めるから。」

父様は私を溺愛してる。
気持ち悪いぐらい。
普通なら手放したくないはずなのに、私を追い出そうと必死だ。

「見た目は完璧なんだが、どうして口が悪いかなぁ…。」

私が母様に瓜二つのようにそっくりだから、見たくないんだろう。
物心ついた頃から、父様は私の目を見て話さなくなった。
周りも、母様の悪口ばかり言う。

だけどね、私にとってどんな母様でも母様だから。
唯一の母様だから。
たとえ私を捨てたとしても、私よりも大切な方ができたというだけの話でしょう?
それが〝人〟だとしても。

「安心して、父様。
私、もうすぐここを出る。」

そう告げると、父様は顔をものすごい勢いでこっちに向ける。
だけど私の目は見ない。
父様は何も言わない。

「私ね、居心地悪いの。
私ね、母様にそっくりな顔が大好きなの。
だからね、母様を嫌う此処は居心地悪いの。」

その日、私は城を出た。
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