執事と共に雪遊びを。
密室の部屋の窓に書かれた文字。

しかし、結露をなぞる子供のいたずらのような文字は、どこか懐かしささえ覚えた。


――トン……トン……トン……


ふと、遠くからか、近くからかわからないが奇妙な音が聞こえた。

誰かが、頼りない足取りで歩いているような。

だが、廊下を歩くような音ではない。


「ラップ音か……」


そして、追い討ちをかけるように2つ隣の病室の前から、看護士が派手に転ぶ音が聞こえた。


――春樹は、少しだけ耳にした、病院の噂を思い出していた。
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