左目のマスカット味
…というより、睨んでいた。


あたしは、部屋に入りドアを閉める。

そこから一歩だけ前に出た。









「…な、なに?」


震える手を後ろに回した。



「さっきの電話、ほんまに女?」


表情一つ変えずに言う悠。



「…なんでそんなこと聞くん?」


「男なんやろ?」


「えっ?」


ベッドを降りて、あたしに近づいてくる。


「嘘つかんといてや。ほんまは男なんやろ? ハルくんって」


「ち、ちゃうよ…。ねえ、悠…。」



2人の距離は縮まるばかり。
後ろにさがれるのは一歩分だけ。


「とおぃ…」


ぺたん、と 座り込んでしまった。
それに覆いかぶさるようにあたしの上に乗る。



「なぁ雨美、正直に言ってや。」


あたしの首の横にうずくまる悠。
それを露骨に避けるあたし。


「雨美…。もし言わんかったら、どうなるか分かってる?」


「どうなるん……?」



顔を少し離して、悠は鼻で笑う。

左手で両腕を掴んだ。


「…こうなるねんで?」























そう言い、右手であたしのお腹を殴った。


「…っ!」

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