空へ
俺達は全速力で走り、理沙よりも早く部室へ戻った。
何食わぬ顔で楽器の手入れをするフリをする。
適当に楽譜を開け、適当に楽器をならすと、理沙が勢いよく部室のドアを開けた。
「ちっす」
「チーッス。遅かったやん」
「あぁ、ちょっとな…」
「ちょっと何?」
意地悪っぽく聞いてみた。
「なんでもねーよ」
至って冷静な理沙。
「いやいや、遅れた原因くらいはちゃんと言ってもらわへんと…」
そう言いかけると、陽菜が「ちょっと」と俺の肩を軽く引っ張った。
「何でそんな事聞くのよ」
「いや、なんか面白そうやと思って…」
俺と陽菜がヒソヒソと話している様子を見てた理沙がボソっと言った。
「お前達見てたくせに」
俺と陽菜が口を揃えて「え?」と言う。
「見てただろ、さっきのやつ。努、あんたの声が聞こえてたよ」
「あら?」
とぼけてみせたが、理沙は続けた。
「たまにあるんだよ、同性に告られるの。もちろん全部断るけどね」
理沙は何か冷めたような口調で言った。
たまにって、今回だけじゃないんだ。
フォロー気味に陽菜が言う。
「あ、でも同性に好かれるって、素敵な事じゃない?私、同性に告白された事なんてないし」
当たり前だ。
「まぁな。でも恋愛対象にはなんねーよ」
理沙はそう言い、続けた。
「そういえば、努と陽菜って付き合ってるんだよな」
思わず陽菜と同時に「え?」と聞き返す。
「お前達って、出会ってすぐに付き合ったじゃん。お互いに何がどう気に入ったっての?」
陽菜の好きなところ…
いつも笑顔で明るいところだ。
そういえば、陽菜は俺の何が良かったのだろう…
俺の事が好きだなんて聞いた事がない。
一度もデートしてないしね。
陽菜が何かを話す前に、俺は言った。
「そんなん秘密に決まってるやん」
陽菜が一体、俺のどこが好きなのか…
それを聞く自信がなかった。
だから陽菜が何か話すよりも先に言ってやった。
「さ、全員揃ったことやし、チャッチャと練習しようや」
理沙は変わらず冷めた表情で、何もいい返さなかった。
何食わぬ顔で楽器の手入れをするフリをする。
適当に楽譜を開け、適当に楽器をならすと、理沙が勢いよく部室のドアを開けた。
「ちっす」
「チーッス。遅かったやん」
「あぁ、ちょっとな…」
「ちょっと何?」
意地悪っぽく聞いてみた。
「なんでもねーよ」
至って冷静な理沙。
「いやいや、遅れた原因くらいはちゃんと言ってもらわへんと…」
そう言いかけると、陽菜が「ちょっと」と俺の肩を軽く引っ張った。
「何でそんな事聞くのよ」
「いや、なんか面白そうやと思って…」
俺と陽菜がヒソヒソと話している様子を見てた理沙がボソっと言った。
「お前達見てたくせに」
俺と陽菜が口を揃えて「え?」と言う。
「見てただろ、さっきのやつ。努、あんたの声が聞こえてたよ」
「あら?」
とぼけてみせたが、理沙は続けた。
「たまにあるんだよ、同性に告られるの。もちろん全部断るけどね」
理沙は何か冷めたような口調で言った。
たまにって、今回だけじゃないんだ。
フォロー気味に陽菜が言う。
「あ、でも同性に好かれるって、素敵な事じゃない?私、同性に告白された事なんてないし」
当たり前だ。
「まぁな。でも恋愛対象にはなんねーよ」
理沙はそう言い、続けた。
「そういえば、努と陽菜って付き合ってるんだよな」
思わず陽菜と同時に「え?」と聞き返す。
「お前達って、出会ってすぐに付き合ったじゃん。お互いに何がどう気に入ったっての?」
陽菜の好きなところ…
いつも笑顔で明るいところだ。
そういえば、陽菜は俺の何が良かったのだろう…
俺の事が好きだなんて聞いた事がない。
一度もデートしてないしね。
陽菜が何かを話す前に、俺は言った。
「そんなん秘密に決まってるやん」
陽菜が一体、俺のどこが好きなのか…
それを聞く自信がなかった。
だから陽菜が何か話すよりも先に言ってやった。
「さ、全員揃ったことやし、チャッチャと練習しようや」
理沙は変わらず冷めた表情で、何もいい返さなかった。