空へ
「あれ見てよッ!」

物陰に隠れ、ヒソヒソ声で話す陽菜。

一体なんだってんだ。

陽菜が指す方には理沙と、もう一人女の子がいた。

「あれが何なん?」

「え、見て分からないの?」

「分からへん」

女の子が理沙に頭を下げる。

何かを話しているが、ここからじゃ聞こえないなぁ。

「何かの勧誘?」

「違うよ。あれ、理沙が告白されてるんだよ」

「ハァ!?」

思わず大声を出してしまった。

女の子が、理沙に告白?
…って、意味分かんねぇ。

「ちょ、ちょっと!大声出したら向こうに聞こえるじゃない!」

「あ、悪い。でも何でなん?おかしいやん。あ、実は理沙は男やったとか…」

俺がそう言うと、陽菜は少しムッとした顔で言った。

「そんな訳ないじゃん!」

「…冗談やがな」

「理沙はね、結構女の子にモテるんだよ」

「あ、そうなん?」

「うん。まぁ、同学年は男の子少ないから女子校みたいなもんだしね。それに、理沙って男らしいトコあるしさ」

理沙が男らしい…

もっともだ。

本人が聞いたら怒るだろうけどね。

「うーん、どーにかして二人が何話してるんか聞きたいわぁ」

俺がそうボヤいた時、理沙は女の子に頭を下げた。

そして、何かを言った。

聞き取れないが、口の動きでだいたい分かる。

「ご・め・ん…やな、あれは」

「うん、そだね」

「チ、なんや、つまらん…」

俺がそうぼやいた時、隣にいた良美から睨まれたような気がした。

「え、ちょ、冗談やで? それよりも、そろそろ部室に戻らへんと!」



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