恋した私の負け(短)
「だって、不安なの。中学の時からずっと見てたから……やっと、あたしの物になったと思ったのに、」
“あたしの物”
彼女だから言える、最大の暴挙。
「やっと、要ちゃんから奪い取れたと思ったのに……っ!」
今までに見たことのない真剣な彼女。悔しそうに表情を歪ませて、私を精一杯睨んでいた。
大きな目から今にも零れ出しそうな涙を必死につなぎ止めて、眉間に皺を寄せて、身体の両側で握った拳が僅かに震えている。
「なんで、要ちゃんなの?あたしだって頑張ってるのに、なんでいつまでも滝の隣に要ちゃんがいるの?」
怒ったことなんて、怒鳴ったことなんて、今まで生きてきて一回もなかっただろう。
「なんで、あたしだけ見てくれないの……?」