恋した私の負け(短)
あまりにも突然の出来事に頭は大混乱。心臓は今までにないくらい騒いでいて、顔に熱が上るのが分かる。
時々当たる肩をなんとか離して、少し俯き気味に彼の隣を歩いた。もちろん、なんとか手を離そうと必死になりながら、だ。
「買い物行きたい」
「一人で行け」
「やーだー」
「……うざっ」
私の気持ちも知らないで、彼は上機嫌に街中を歩いていた。
結局、何軒も服屋さんを回って空が藍色に変わり始めた頃。
買い物に満足しただろう彼に連れられて、お気に入りだと言うカフェに入った。
「はー、楽しかった」
向かい合わせに座る彼は、いつも以上にニコニコ笑っていて。それが凄く痛々しかった。