恋した私の負け(短)





あまりにも突然の出来事に頭は大混乱。心臓は今までにないくらい騒いでいて、顔に熱が上るのが分かる。

時々当たる肩をなんとか離して、少し俯き気味に彼の隣を歩いた。もちろん、なんとか手を離そうと必死になりながら、だ。


「買い物行きたい」

「一人で行け」

「やーだー」

「……うざっ」


私の気持ちも知らないで、彼は上機嫌に街中を歩いていた。





結局、何軒も服屋さんを回って空が藍色に変わり始めた頃。

買い物に満足しただろう彼に連れられて、お気に入りだと言うカフェに入った。


「はー、楽しかった」


向かい合わせに座る彼は、いつも以上にニコニコ笑っていて。それが凄く痛々しかった。





< 7 / 17 >

この作品をシェア

pagetop