恋した私の負け(短)
今日もまたいつものように、彼の口からは彼女の話ばかりなんだろう。
□
「気が変わった!なぁ、デートしようぜっ」
「……はぁ!?」
久しぶりに2人で駅に出てきて、改札を抜けるとすぐに手を繋がれた。
「ちょ、手っ」
「なに、恥ずかしいの?女の子ぶっちゃって、かーわいっ」
「そーゆー問題じゃないだろ」
誰かに見られたらどうするんだ。彼女とか、彼女の友達とか、端から見たら立派な浮気現場だろう。
って言うか“ぶっちゃって”ってなんだ、こんなんでも歴(れっき)とした女子だっての。
「デートなんだし、手くらい繋ぐでしょ」
「デートじゃないし。繋いでなくても逃げないから、離せ」
「いーやっ。ほら、どこ行こっか」
……こんのクソヤロウ。