君を忘れない
「あんたと美波ですよ」


「ああ、なるほどね。

俺と美波が付き合って・・・

ええっ!」


思わず声をあげて驚いてしまった。

今日、たまたま一緒にサークルに来たというだけで、そういう噂になってしまうのか。

いや、きっと勝手に四盛が思っているだけだろう。


「誰がそんなこと言ってたんだよ」


「今日一緒に来ていたから、二人付き合ったのかなって思っただけです」


案の定、勝手にこいつが思い込んでいるだけだったが、たまにこういう妄想が働くところがあるから非常に困る。

こいつにとって男女が一緒に歩いていたらカップルということになってしまうのだろうか。

そんなことしたら、この世界はカップルだらけでそれこそ困ったことになってしまう。



それに、美波には彼氏がいるのをこいつだって知っているはずだ。


「その様子だと違うようですね。

というか、そうなったらトラさんだったら、絶対に俺に言ってきてくれますよね。

いや、一ヶ月前に美波たち別れたから無きにしも非ずかなって」


「えっ、別れたの」


「知らなかったんですか。

もう一ヶ月前の話しだし、結構みんな知っていますよ」


今、初めて聞いた。

この一ヶ月、美波は何も言わなかったし、それに今日だって普段どおりだったじゃないか。


「そりゃ、自分から別れたなんてことを言いふらす人なんていないでしょう」


確かにそうだが、そうだとしたら僕は今日あいつに最悪なことを言ってしまった。

どうしてこうも僕は地雷を自ら踏んでしまうようなことを言ってしまうのだろう。



体育館に戻り、中央でみんなと笑顔で話している美波を見つける。


(あいつ、強いな)


そう思って立っていると、手前のコートの三人から呼ばれ試合に入った。
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