わがままな彼女。
恒也Side


「恒也、はよーっす!」

コイツ、龍斗(たつと)。

この間から、美愛を起こしたがいーとか、何かと気にかけてた奴、コイツね。

…まぁそこそこいい奴。

親友…かな、一応。

「はよ。」

「あ、美愛チャン!」

コイツは、美愛の事、気に入ってるっぽい。

まぁ元々。

龍斗は女好きだし。

「…好きなんだろ?」

は!?

なんで知ってんの!?

「いや…、え、なぜに?」

まぢでさ。

「見てりゃ分かるし。」

お前くらいだろ。

「でも、俺は…好きになれねーよ…。」

…お前くらいだよ。

俺の秘密を知ってんのも。

「ぶぁーか。」

俺はバカじゃねぇ。

「バカじゃねぇよ。」

「バカじゃねぇからか。考えすぎなんだよ。」

…え?

「誰もそんな事望んでねぇよ。例え…お前がいなくなるとしても、お前の事を愛してる奴が離れて行くか?」

…違う。

「ちげーよ。俺は、俺が傷付く事がこえーんじゃねぇ。好きな奴が…美愛が傷付いて、泣くのがこえーんだよ。」

だから…

だから。

「俺は美愛を幸せにはできねーよ…。」

一緒になるなんて、そんな夢みたいな話、あるわけねーけど、もしあるとしても、俺は自ら辞退するだろう。

「…行ってこいよ、美愛チャンのとこ。」

龍斗はそれ以上、何も言ってこなかった。

「…ん。」


ドンッ


美愛の背中にアタックすると同時に、首に腕を回した。

「いったーす」

…落ち着く。

心を整理しねーと。

龍斗のせいでモヤモヤする。

くそ。

あいつ、ただじゃおかねぇ。

「なんなん?この体制は」

「ぶー」

今はこうやってすんなり離れられるから。

まだ、歯止めが効くから。

きっと俺は、やっぱり自分が傷付くのも怖い。

美愛に執着しすぎて、離れられなくなって、忘れられなくなって。


俺は、ただの弱虫だ。


いや。

病を抱えた…。

余命あとわずかの。


弱虫な、悲しい哀しい、それでも人を愛したい。

そんな…あぁ、俺は。

なんて強がりなんだろう。

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