春は来ないと、彼が言った。


慌てふためくわたしをなんだか面白くなさそうに眺めていた妃ちゃんが、思い出したようにぽんっと手を打った。



「忘れてた。“春暁、待ち幸い”の話」



ああっ!


わたしもすっかり忘れていたから、大きく頷いて同意した。


妃ちゃんがふふっと小さく笑いを零す。



「そういや、そんな話してたな」



隣では恢も同じようにハッとした表情をしている。


藍くんと睦くんは不思議そうに首を傾げていたけど、妃ちゃんはそれを気に留めない様子で解説を続行した。




< 60 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop