踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>
 意地悪っぽく問いかける男に文句を言うのかと思いきや、同じようにいたずらな笑みを浮かべた。

「ボクの癒しは君だよ」

「!」

 戒は驚いて切れ長の目を丸くする。

「変な意味でじゃないよ」

 一度、目を閉じて暗闇の先を見つめた。

「君はこの世界に溶け込んでいるように見えてその実、ボクにはとても鮮やかに映るんだよ」

 現実的であるハズなのに、何故か夢見心地にさせられる。

「……?」

 いぶかしげに見下ろす戒に青年は薄く笑みを浮かべた。

「まあ気にしないで」

 肩をすくめて再びディスプレイに視線を移した。


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