踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>
「あ……」

 か細い声に2人は振り返ると、ドラム缶からこちらを見つめる少年がそこにいた。

「あ、あの……戒(カイ)さんですよね」

 怪訝な表情を向ける青年と男に少年は恐る恐る近づき、コートの男に目を向けて発する。

「こちらが翼(つばさ)さん」

「僕のコトも知ってるの?」

 薄汚れたTシャツと黒いソフトデニムのジーンズを履いた幼い顔立ちは2人を怖々(こわごわ)と見上げていた。

「俺たちのことを何故、知っている」

 赤黒い瞳が少年を見下ろすと、

「説明はあとで、とりあえずこちらに」

 やや急くように2人を促した。

 戒と翼は互いに顔を見合わせ、警戒を緩める事となく背中を追う。

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