踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>

*神に祈るのは──



 戸塚は、数人の男から滅多打ちにされている1人の男を冷たく見つめる。

「……」

 ひと通り満足したらしく、高価な椅子から立ち上がると窓の外を眺めた。

 声もなく倒れている男を他の男たちが両腕を抱えて連れていく。

 筒井はそれを一瞥すると、戸塚に視線を移した。

 こんな情勢で自分の趣味にこだわる戸塚に呆れるが、彼に逆らう事は出来ない。誰だって今の男のような目には遭いたくはない。

 流れ弾がたまたま翼(つばさ)という青年に当たっただけだろうに、その責任を取らされて袋叩きなんて笑えない冗談だ。
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