踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>
 あの青年が死んでいたらどうなっていたのか──折角の戦力が1人減る事になっていたかもしれないと考えると溜息が漏れるばかりだ。

 相手には戒(カイ)という強敵がいるというのに……筒井は苦い表情を浮かべた。

 そんな筒井の心配をよそに、戸塚はまったく別の事を考えていた。

「戒、目障りな奴だ」

 敵としてではなく、翼の近くにいる事にだ。

 翼があの男を慕っているのは知っている。あの男のせいで、いくら「ポイントを倍にしてやる」と持ちかけても自分の組織に来なかったのだ。

 当然、翼は戸塚の個人的な理由で引き抜きに遭っていた事など知るよしもない。

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