私の愛した人
何分もかけて絡まった髪を解きほぐし、ヘアメイクにとりかかると鏡越しに圭吾と目が合った。

ムスッとした顔をして、ベットの上にいる圭吾に苦笑しながら声をかけた。

「今日はどこに行くんですか?」

「いいから早く終わらせろ」

ムスッとしたまま圭吾は返事をした。

━━場所によって髪型とか決めやすいんだけどなぁ…

私は鏡越しに圭吾の服装を覗き込んでみた。

白のシャツに黒の袖無しの上着、下は動きやすそうなジーパン。

珍しく黒いネクタイをしていて、少しかしこまったようにも見えた。

「今日はずいぶんとおめかししたねぇ」

私の言葉に圭吾はちょっとだけ頬を染めて、下を向いて「うるせぇ!」と言った。

そんな可愛らしい彼を横目に私は胸まである髪にアイロンをあてた。

数分してヘアメイクは完成した。

圭吾の今日の雰囲気にあわせて、ゆるまきの髪を耳の下あたりで二つに結んでみた。

メイクも少し大人しそうな雰囲気で。

服装も白いワンピースに胸の下あたりで茶色のベルトでしぼって、淡い黄色の半袖の上着を着てみた。

圭吾の隣に並んで鏡を覗き込んでみると、大満足のできばえだった。

そんな私を見下ろして圭吾がポツリとつぶやいた。

「もういーか?」
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