私の愛した人
「で、どこか行く場所決まってるの?」

私は圭吾がこいでいる自転車の後ろから声をかけた。

「バッチリ!今日は俺に任せとけ」

後ろからでも圭吾の表情が想像つくくらい、明るくて元気な声に私の胸は幸せな気持ちで膨らんだ。

駅の近くまでくると圭吾は自転車の速度を落として、私を降ろした。

「俺は自転車を置いてくるから駅前の噴水の前で待ってて」

「え?それなら私も一緒に行く」

「いーから!すぐ行くから!」

圭吾に背中をポンッと押されて私は渋々、駅前の噴水へと歩きだした。

噴水の前に付くと、近くにあるアンティーク調の洒落たベンチに腰を掛けた。

ここは登校するときの私と圭吾の待ち合わせ場所でもある。

私の家は駅の南側で、圭吾は北側に住んでいる。

真逆なのにいつも迎えに来てくれる圭吾にはちょっと後ろめたさがあるが、優越感を感じている自分もいる。

「そういえば私は圭吾の家に行ったことがない気がする…」

前に圭吾の家に行きたいと言ったときは、遠いからと話を逸らされて終わった気がする…

そんなことを考えていると、噴水の向こうから走ってくる圭吾の姿が見えた。

「お待たせ!じゃ行くぞ」

私は楽しそうに笑う圭吾の顔を見ると、さっきまでの疑問がいつのまにか消えていたのだった。

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