チェリー
「タクシー来たわ。気をつけてな」

「うん。あ、謙太郎ちゃん!!」

「ん?」

「仕事、頑張ってね」

「ありがとう」

タクシーに乗って家まで帰る。

小さな頃は謙太郎ちゃん家まで1分もしなかったのに、謙太郎ちゃんが一人暮らしを初めて、謙太郎ちゃんまで約20分。

家について、彼女と一緒だと思ったから電話じゃなくてメールをする。

『今着いたで。タッパーは一週間後に取りに行くな』

もちろん返事はないと思ったから2、3行開けてから

『おやすみなさい』

と、入れておく。
やっぱり返事はなかった。

それから、部屋に帰って録りためていたDVDを見る。

全部、謙太郎ちゃんが出てるバライティやドラマ。

見ながら、涙が溢れる。
いつの間にか遠くなった背中。
お兄ちゃんなんて、思えない。

ずっとずっと大好きだった。

謙太郎ちゃんに初めて彼女が出来た時、事務所に入って初めて雑誌に出た時、テレビに出た時、その瞬間もずっと謙太郎ちゃんが好きやった。

「…しのぶくん、かっこいいな」

謙太郎ちゃんは、八人グループで一番年上さん。

いつの間にか私は、謙太郎ちゃんと同じグループのしのぶくんファンになっていた。
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