1LDKヤクザ彼氏と秘密の同居生活【完】
「エミさんって二重人格?」
「普段は大人しいけど、キレたら俺にも止められねぇ。恒にしかエミちゃんはなだめられねぇからほっとくぞ」
へぇ……。聡ちゃんでも止められないなんて、よっぽどだね。あたしもエミさんは怒らせないようにしなくちゃ。
「あ、蘭さん達が喧嘩してたの。止めてあげて?」
「やらせておけ。俺はラミカと二人で来るつもりだったんだから尻拭いはごめんだ」
「聡ちゃん、冷たーい」
プンプンとほっぺたを膨らませると、聡ちゃんはため息をついてあたしの手を繋いだ。
「めんどくせぇな。どこだよ?」
「こっち!」
なんだかんだ言って優しいんだから。頼りになるからみんな聡ちゃんを慕ってるんだろうな。
「バカって言うほうがバカなんだよ! バーカ!」
「自分でバカって言ってるじゃねぇか! バカ!」
…………………………。
ま、まだやってる。
「……低レベルな争いだな。ラミカはここで待ってろ」
「うん」
聡ちゃんは群衆の中に入っていって、仲裁し始めた。あたしは青い空を見上げて、深呼吸した。
せっかく海に来たのに、まだ入ってないし。