ディアパゾン−世界に響く神の歌−
序章 皇弟と魔術師

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もしも――高く高く、翼を持つ鳥達も辿り着く事のできないほどの高みからこの世界を見下ろせたなら、いびつな丸い形の大陸の姿を知ることができただろう。


大陸の中心には高くそびえる一つの頂。
その山裾の西と東は円の縁からえぐられたような内海。
この世界に唯一つの、どこまでも広がる青い海に孤独に浮かんだ大陸の姿。


その大陸の中心にあって、国を隔てる高く険しい山は『ムイ』と呼ばれた。
東西の内海によって分けられた大陸の北側の地域、東の端から三分の二を領土とする強国の名を、『新生アルゴール帝国』という。


『新生アルゴール帝国』の帝都『ガイソール』は、帝国の七領地の内、最北西にあり、海を望む高台にそびえる威容の宮殿を囲むように広がる城塞都市だ。
その街を包む城壁は、ムイから流れる川と、それから分けられた広い水路によってぐるりと囲まれ、難攻不落の都としても隣国に知られていた。
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