先生~あなたに届くまで~

正直驚いていた。

告白された事はもちろんだけど

そんなに私を知ってくれていた事に
一番驚いた。


だからこそ真剣に向き合わなくては
いけないと思った。


「渡辺君。
 本当にありがとう。

 そんなに見ててくれたなんて
 思ってなかったから正直に嬉しいよ。

 だから私も素直な気持ちを話すね。

 私、今好きな人がいるの。
 
 今日話しただけだけど渡辺君は
 本当に良い人だってわかったし...
 話しやすい空気も作ってくれて...

 正直に言って一緒にいて楽しかった。

 けど今はその人の事以外...
 考えられない。
 
 まだ諦められないの。

 本当にごめんなさい。」

私は思いっきり頭を下げて謝った。


すると渡辺君は私の肩をそっと掴んで
頭を上げさせた後そっと微笑んだ。


「浅川さんは本当に真っ直ぐだな。

 けど俺も浅川さんと一緒で
 そんなに簡単に諦められない。

 今すぐ返事を出さないでほしい。

 もっと俺の事を
 知ってからにしてほしい。

 わがままでごめんね。
 
 でも俺にも時間をくれないかな?」

申し訳なさそうに
でもしっかりと言葉にする渡辺君に
その場で「無理」とは言えないと思った。


何より渡辺君の気持ちが痛いほど
わかってしまって「無理」なんて
言えなかった。

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