先生~あなたに届くまで~

しばらく抱きしめられたままでいたけど
少しずつ冷静になると
かなり恥かしい状況だと気づいた。

「ゆ、ゆ、優輝!!
私すっごい恥ずかしいことになってない?」

テンパっている私の声に
優輝はふふっと笑った。

「かなり恥ずかしいね。
目立っちゃってるもん。

珍しく大人しく抱きしめられてるから
滅多にないしいいかぁと思って。」

優輝は余裕たっぷりでおかしそうに笑っている。

私はというと
顔は真っ赤になって
慌てて優輝の腕からすり抜けた。

くくくっと笑う優輝はえらく楽しそうで
私は優輝をわざとらしくキッと睨んだ。

それでも優輝は笑っている。

「もぉ!!笑い過ぎ!!
ほんと恥ずかしいんだからね!!」

「はいはい。
ごめんね。雪音ちゃん。」

そう言いながらよしよしする。
同じ年なのに
優輝の方がお兄ちゃんのようだ。

「仲いいねぇ。」

突然後ろから声がして振り向くと
先生が笑顔で立っていた。

「先生!!」

「伊原先生も悪趣味ですね。
覗きですか?」

優輝はおかしそうに先生に冗談を言う。

「悪趣味って失礼だな。
お前らが勝手に見せつけてんの!!

学校ではほどほどにな!!

渡辺!!俺の可愛い生徒泣かすなよ!!」

先生は優輝の言葉にははっと笑いながら
ぽんっと肩を叩いて歩いて行く。

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