【短】「好きだよ」~伝えないと決めた想い~
解散した後、音楽室でひとりフルートを吹いてみた。
今日、同じフレーズを大きな舞台で吹いたのがまだ信じられない。
ひとりになって、ようやく悔しさが溢れてきて。
いつの間にか涙が流れていた。
そんな時。
ガラッと開く扉と同時に、聞き覚えのある声。
「おら、下校時間だぞー…って、なんだお前か。
お前フルートうまいのな」
びっくりして振り返ってみると、そこには鍵を持った先生が立っていた。
泣いていたことに気付かれたくなくて、慌ててまた後ろを向いた。
「今日、コンクールだったんだけど予選通れなかったんだ。
あんなにがんばったのになぁ…」
そう言った途端、今まで平気だったのに急に涙が溢れてきて。
みんなの前ではあんなに冷静だったのに、今は泣くのを我慢するので精一杯。