真輔の風
娘の茜には興味はなかったが、
ここに来て、
茜は真輔の事を幼なじみのように吹聴している。
「昨日一年生の子と歩いていたのを見たわよ。」
女生徒数人が固まっている中で、
茜は突然親しそうに声をかけた。
今までは挨拶しかしたことが無かったが、
真輔のことは全て知っているのが当然、と言うような感じだ。
真輔は何も言わずに席に着いた。
が、茜たちが寄ってきて真輔の席を囲んだ。
「何だ。向こうへ行けよ。」
こんな言葉を出す真輔も珍しい。
「だって聞きたいもの。ねえ。」
「見たのならそれで良いじゃあないか。」
「本当なの。駄目よ、あの子は駄目。ねえ。」
「そうよ。別に詮索するわけではないけど、
小田切君、彼女はやめたほうがいいわ。
悪い噂が出ている子よ。」
「あんな服を着て学校へ来ているし… 」
真輔の話したことのない級友たちも
茜と一緒になっている。
その内にクラス全体が、
真輔と茜たちの様子に興味深々と、
耳をそばだてているような雰囲気になっている。
いつも何事にも無関心の真輔が、
言葉は少ないにしても、
茜たちに反応している事が珍しいのだ。