真輔の風

もし、最悪のケースなら、

警察へ連れて行き、保護してもらわなければ。

暴力団が相手なら家族だけでは守れないだろう。

祖父の言葉に心を動かされながらも、

真輔は吉沢百合子のことを考えていた。


そうか、病院へ行く前に寄ればいいのだ。

自転車はまだ駅前の駐輪場だ。

病院へ行くなら家の近くのバス停から直接行けるが、

吉沢の家まで行ってから地下鉄でも行ける。

そんな簡単なことなのに、高校生になっているとは言え、
今までが素直に育っている真輔、

祖父母を騙すような行動はしたことが無いから、

口実を考えつくのに時間を要してしまった。


祖父母以外なら平気で無視して過ごしているが、

慈しみ愛情たっぷりに育ててくれている祖父母にだけは、
余計な心配はかけられなかった。

母を知らず、

父や姉がいても自分の家族は祖父母だけのように思っている真輔だ。


が、栄作のほうが一枚上手で、真輔の心は見通していた。

とにかく祖父は、可愛い真輔のことが心配なだけなのだ。

真輔は自分たちが息子から預かっている大切な孫。

しかし、今の真輔はいつもとは違う。

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