目覚めた時に
「チセ、約束してくれないか?」

桐生さんは私を強く抱きしめたまま続けた。

「無理して思い出さなくていい。君の苦しむ姿をもう二度と見たくない。」

「桐生さん・・・。」

私は記憶を取り戻すって決めた。

どんな苦痛と引き換えでも、

「それは約束できません・・・。」

私は小さく呟いた。

「私は記憶を取り戻すって決めたんです。桐生さんと真剣に向き合いたいんです。辛い記憶ばかりじゃない、桐生さんとの事を1秒でも忘れたくない。」

私は涙ながらに訴えた。

わがままな私でごめんなさい。

許して桐生さん・・・。

「私は死ぬぐらいの苦痛にでも耐えます。」

「チセ、本気なのか?」

桐生さんはそっと抱きしめた腕をはなした。

そして何も言わずに病室を出た。


桐生さん。

私の事嫌いになった?

一人の病室はとても冷たくて寂しかった。


私は桐生さんに
途轍もない安心感と
勇気を貰っていた事に気付いた。

もう泣かない。

私は強くなろうと思った。

私が泣いたら傷つく人がいる。

悲しむ人がいる。

だから私はもう泣かないと決めた。


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