エリートな彼に甘く奪われました
安東先輩…。

彼はこちらを見て軽く会釈した。

俺は静かに立ち上がると彼に続いて廊下に出た。

窓の外に広がるオフィス街を見下ろしながら二人並ぶと彼は静かに話し始めた。

「俺は彼女の兄と幼なじみでね、小さな頃から彼女を知ってるんだ。
愛が、俺を好きだと言った時、俺は彼女を妹の様にしか思えなかった。

だけど最近、あの日…、彼女と過ごした夜からずっと彼女を想う自分の気持ちに気付いたんだ。

俺は愛を君に渡したくない」

「……。」

じゃあ彼女の気持ちはどうなる。

あまりに身勝手に思えた。

「でも、今彼女が求めているのは俺です」

彼はふふっと笑うと、

「…さすが社内人気一位の男は自信があるんだね。
女がみんな自分の方を向くと思ってる。」

軽く嫌味がかったその一言にムカッとする。

「俺をどう評価しようと自由ですが、とにかく、俺も彼女を譲るつもりはありません」

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