エリートな彼に甘く奪われました
さわさわと霧の様な小雨が降ってきていた。

俺達は少し速足でオフィス街を通り過ぎた。

会場のビアホールは営業部が貸し切ったみたいで、すでに参加予定のほとんどの社員達が雑談していた。

俺達が記名を終えて中に入ると、皆一瞬こちらを向いて俺を見た。しんと静まり返ってその直後、

「「「きゃ~!!!」」」

と女性達が騒ぎ出した。

呆気に取られていると幹事の先輩社員が

「浅香くん、ようこそようこそ。君のお陰ですごい出席率だよ!!部始まって以来だよ~」

と言いながら目の前に現れて、

「はい、こっちこっち~」

と中央辺りの席を勧めてきた。

「は、はあ…」

素直に案内に従う。

…客寄せパンダじゃないんだから。

勧められるまま、着席し、ふと見上げた正面席。……あ、いた。

目の前にある大きな瞳と視線がぶつかり少し驚きつつも四日振りの彼女をじっと見詰めた。
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