エリートな彼に甘く奪われました
俺は煙草に火を点け深く吸い込むと、はあぁ~、と煙と一緒に大きな溜め息をついた。

なぜ、俺の周りではよくない事ばかりが起きるんだろう。

先ほどの呆気に取られた彼女の顔を思い浮かべる。

もう俺の事なんて相手にしてもらえないだろうなぁ。何となくいつもトラブルメーカーだもんな。俺が女なら俺の様な男は面倒臭く思うけれど。

なぜか俺に近づく女は後を絶たない。

そもそも名前すら知らない間柄だ。彼女とは何も始まってさえいないのだ。

彼女の事なんて何も知らないけれど、何となくあんな感じの子が選ぶのは落ち着いた平穏な男なんじゃないか、と勝手に思う。

「色男も大変だなあ、お前と一緒にいるとホント飽きないよ」

釜田が煙草の煙を吐き出しながら言った。

「他人事だと思って」

「お前はいずれ結局森山に落ち着くのかな、と思ってた。……他に誰かいるのか?」

「………。」

四日前から名前も知らない相手に片思いしてます、なんて言えるか。

「……まあ、俺が聞く事じゃないか。」

釜田は何かを感じ取ったのかそれ以上追及してこなかった。

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