プラトニック・ラブ




そんないっぱいいっぱいでドキドキマックスなあたしに、迅さんは小さく笑い声を漏らすと、




「手ぇ震えてんだけど」




なんて酷いことを言ってくる。


そのくらいドキドキしてるんだから、そこはあえて気づいても言ってほしくなかった。



カっと顔が熱くなる。


だからあたしは正直になんてなれない。




「ふっ…震えてないですっ!!」




そう叫ぶ。


けれど震えてるのは誰が見ても分かるほどで、迅さんはそんな強がるあたしに笑うだけだった。



…悔しい。



迅さんはこういう経験をたくさんしてきたから大丈夫なのかもしれないけど、こんなことにちっとも慣れていないあたしはドキドキが止まらない。



ドキドキドキ。



オンボロな家の狭い廊下で抱き合うあたし達。


ちっとも絵になりゃしない。



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