黒猫*溺愛シンドローム
猫みたいな大きな瞳。
サラサラで艶々の黒髪。
細くて長い手足。
バランスのとれたしなやかな身体。
目を閉じていても、はっきりと浮かんでくる。
大好きな“女の子”。
近づけば、
甘い香りが鼻をくすぐるし。
触れてみれば、
柔らかい感触に支配される。
俺の心を動かすことができるのは、彼女だけ。
俺の身体を満たすことができるのも、彼女だけ。
だから、
他の子じゃダメなんだ。
「……浅海さん、ですよね?」
「えっ?」
いきなり出てきた彼女の名前に、一瞬にして現実に引き戻される俺。
……いけない。トリップするとこだった。
「“好きな子”って、浅海さんのことでしょう?つき合ってる、って本当なんですか?」
真剣な表情。
「それは……」
最近、よく聞かれる質問。
毎日毎日、必ず誰かは聞いてくる。
だから、俺は同じ答えを繰り返すんだ。
「本当、だよ?」