黒猫*溺愛シンドローム




「“彼女”のことが大好きだから、他の子じゃダメなんだ。…ごめんね?」



やんわりと、でも、きっぱりと口にすれば、



「……そう、ですか。
浅海さんじゃ…仕方ない、ですよね。」


弱々しくも、微笑む女の子。

“仕方ない”の意味はわからないけど、この際、よしとしよう。



「聞いてくれて、ありがとうございました。浅海さんとお幸せに…。」



そう言って、その子は去っていった。

こういうシチュエーションは何度か経験してきたけど…。
やっぱり、あまりいいものではない。

毎回、罪悪感でいっぱいになる。

特に、今日は。
いい子そうだったから、なんだか余計に申し訳ない。

気持ちに応えられないことはもちろんだけど……








「ごめん、ね。」




俺は、嘘をつきました。





本当はまだ、


“彼女”じゃないんだよね。


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