薔薇部屋
ミキの見詰める先…―それは、今、自分のいる場所とはまるで違う憧れの異世界
つまり外の世界

外気になるべく触れないようにと、滅多に窓さえも開けさせてもらえない
それでも見詰める…―いつかこの病が治って、外に飛び出せると

「あそこの公園の桜は、今年も咲くかしら」
独り言…―それは小さな独り言
そして、桜が見える公園もなんだかとても小さい…―ミキのベッドからは桜だけがよく見える程度
時折、人間が見えるが、男なのか女なのか分かるくらいの、その程度
でも、その程度でも、ミキにとって一番人間観察ができる場所…―ミキは何となくだが、その場所が好きだった

「今日はどんな人が来るかしら?男?女?…あ、小学生かしらね」
また独り言、ただの独り言…―ミキは思う、花瓶に飾られる花は嫌い、でも何故か桜は好き

「…―ミキ」
「お父様」
「何を見ていたんだい?」
「公園…いえ、外を眺めていましたわ」
「ユミもよく外を見る奴だった…」
「お母様?」

久々にミキの前に現れた父は、母親の話をゆっくりとミキに聞かせ始めたのだ
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