Secret*Hearts


「ちょ、何するの…!?憐っ!」

「全く、不愉快極まりない。自分の立場も考えぬまま失礼な発言を繰り返したかと思えば、そんな汚い手で華梨に触れるなど信じられない。」


母親と父親に掴まれたまま、そこから逃げ出そうとでもするかのように必死にもがき続ける華梨。俺の名前を呼ぶ声が、俺へと伸ばそうと宙をきる手が、すべて凶器となって胸に突き刺さる。

殴られた頬より、傷ついていく心の方がよっぽど痛かった。


「もう二度と家の敷居を跨ぐな。華梨とも関わるな。お前の顔など、この先二度と見たくない。」

「いやっ!れん、れん、憐っ!!!」

「華梨、諦めて静かになさい。」


ふたりに、半ば…というかほぼ強制的に部屋の外に連れ出されていった華梨は、間違いなく泣いていた。俺の力不足で、泣かせてしまった。

ばたん、と、やたら大きな音を立ててしまったドア。
一人ぽつんと残されたまま、自分の無力さを嘆くことしかできなかった。

ドアが閉まる間際、俺に何かを訴えるような華梨の表情が鮮明に残り、脳裏から離れない。



“どこか、遠くに行きたいわ。”



いつだったか、華梨が呟いた言葉が耳にこだました。





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